数学が苦手な人ほど数Ⅲを得点源に!
百燈塾塾長の長谷川です。
今回の講習でもう一つ、特に生徒たちにわかってもらいたかったことがあります。
それは、
数学が苦手な人であっても、数Ⅲは努力次第で得意にすることができる。
ということです。
今回の数Ⅲコースに参加した生徒のうち、過半数はもともと数学を苦手としている生徒たちでした。
数学ⅠAやⅡBでもかなり苦戦してきた。
数学そのものに苦手意識がある。
そういう生徒もたくさんいました。
だからこそ私は、そんな生徒たちに数Ⅲを頑張ってほしいと思っていました。
数Ⅲは難しい。でも、努力が報われやすい
確かに数Ⅲは難しいです。
とにかく計算量が多い。
考え方を理解したからといって、すぐに問題が解けるようになるわけでもありません。
微分や積分の考え方を理解していても、その後に相当な量の計算練習を積まなければ、なかなか最終的な答えが合うようになりません。
場合によっては半年くらいかけて計算練習を積み続け、ようやく安定して答えが合うようになってくる。
数学は、途中まで考え方が合っていたとしても、最後の答えが合わなければ点数にならないことがあります。
だから、
「理解する」ことと、「実際に正解できる」ことの間に非常に長い距離がある。
これが数Ⅲの大変なところです。
計算も長い。
式も複雑です。
見た目にも難しそうです。
そのため、数学が苦手な生徒ほど数Ⅲに入った瞬間に、
「これは自分には無理だ」
と思ってしまい、挫折してしまうことも少なくありません。
しかし、数Ⅲには逆の側面もあります。
計算が大変だからこそ、計算そのものが入試問題として成立する。
ということです。
実際、東京大学や京都大学のような最難関大学であっても、計算そのものが問題として出題されることがあります。東大では2019年理系第1問、2018年理系第1問、京大では2025年理系第1問、2023年理系第1問、2021年理系第4問などは、ただ数Ⅲの計算を行うだけの問題でした。
つまり数Ⅲでは、特別なひらめきがなくても、
計算力を徹底的に鍛えることによって、最難関大学の問題にまで手が届く。
これは数Ⅲの大きな魅力です。
計算力は才能ではありません。
練習によって鍛えることができます。
だから、必要な練習量さえきちんと確保すれば、数学が苦手だった人でも数Ⅲを武器にすることができます。
特に医学部合格には数Ⅲがカギ!
医学部をはじめとした理系難関大学では、数Ⅲ分野が非常に重視されています。
大学によっては、数学の大問5題のうち3題以上が数Ⅲ分野ということもあります。
試験問題の大部分が数Ⅲから出題される大学も珍しくありません。
だからこそ、
数Ⅲを得意にできれば、理系数学全体がかなり安定します。
数学が苦手な人ほど、
「ⅠAⅡBが苦手だったから、Ⅲも無理だ」
と思わないでほしい。
むしろ私は逆だと思っています。
数学が苦手な人ほど、数Ⅲを得意にしてほしい。
数Ⅲは、練習量がものをいう分野です。
もちろん考える力も必要ですが、高校数学という限られた範囲の中では、使える計算方法や手法にはかなり制限があります。
「これは高校数学の範囲では計算できない(2023年東工大第1問の積分関数など)」
「ここではこの方法を使うしかない(2024年横浜市立大学医学部第4問の積分など」
という場面も多く、実はできることはかなり決まっています。
つまり、必要な手法を一つずつ身につけ、
決まったことを、決まった方法で、丁寧に、正確にやる。
これを徹底することによって伸ばすことができる分野なのです。
派手な発想力よりも、コツコツと真面目に練習を積めることの方が大切です。
だからこそ今回の10日間で、数学が苦手な生徒たちにも、
「自分でも数Ⅲなら戦えるかもしれない」
という感覚を持って帰ってほしいと思っていました。
「一度解けた」を、できたことにしない
今回の講習の中に、数Ⅲの進みがかなり遅く、悩んでいた生徒がいました。
数学リニアを使っていても、最初の1冊目からなかなか抜け出すことができません。
本人も、
「やっても、少し日にちが経つとすぐ忘れてしまう」
「またゼロに戻って、復習し直さないといけなくなる」
「ちょっと数字やカタチが変わるとわからない」
と悩んでいました。
もともと、とても真面目な生徒です。
ノートの字も丁寧。
必要な練習もちゃんとやる。
決してサボっているわけではありません。
それでもなかなか進まない。
私はその生徒が勉強している様子を見ながら、
この子には、「基準」をつくってあげる必要を感じました。
そこで、ある問題を、
「今、これを解いてみて」
と言って解かせてみました。
すると、
「ちょっと忘れてしまったので解けません」
となります。
ただ、答えを見ながら少し復習すると、
「ああ、こうだった」
と思い出します。
そして一度自分で解き直す。
これまでなら、
「解き方も思い出したし、自分でも解けた。じゃあ次へ進もう」
となっていました。
そこで私は止めました。
「次へ進まないで。今の問題、もう一回解いて。」
もう一度解かせます。
そして解き終わったら、
「もう一回。」
さらにもう一度解かせます。
すると、明らかにスピードが上がります。
最初は考えながら解いていた問題が、ほとんど止まることなくスラスラ解けるようになってきます。
そこで私は、
「この状態を“できた”の基準にしないといけない」
と伝えました。
一度解けた。
一度理解した。
だから次へ行く。
それで今まで何度も忘れてしまったのであれば、また忘れます。
そうではなく、
一度忘れてしまった問題なら、しつこく3回くらい解く。
何も見なくても、ほとんど考え込まずに、スラスラ解ける。
そこまでやって初めて次へ進む。
さらに、しばらく時間を空けてもう一度やる。
例えば最初に10分かかった問題なら、
「今度は2分で解けるか、時間を測ってやってみよう」
と指示しました。
4回目の復習で2分程度で解ける。
そこまでいけば、その問題はかなり自分のものになっています。
つまりその生徒に必要だったのは、
もっとたくさん新しい問題を解くことではありませんでした。
一つの問題に対する、
「できた」の基準を変えることだったのです。
そして数日後の授業。
極限の計算について、全体で復習をしてみようと思い、私はホワイトボードにその場で4題ほど問題を作って出しました。
1題目は、教科書レベルのかなり基本的な問題。
2題目、3題目と少しずつ難しくしていきました。
そして最後の4題目は、完全に難関大学の入試レベルを意識した極限の計算問題です。
もちろん、いずれも数学リニアにそのまま載っている問題ではありません。
その場で作った、初めて見る問題です。
4題すべて正解できた生徒は、わずか3名。
高校3年生の一部。
そしてもう一人。
数日前まで、数Ⅲの1冊目からなかなか進めず、ずっと悩んでいたその生徒でした。
全問正解した人を確認したとき、その子は自信を持って手を挙げていました。
少し前まで、
「全然進めない」
「やっても忘れてしまう」
と、目に涙を浮かべるほど苦しんでいた生徒です。
その生徒が、自分の中の「やった」という基準を変えた。
一度解けたら終わりではない。
スラスラ、一瞬で解けるところまでやり切る。
そういう練習に変えた。
すると、数日後には、初めて見る難関大学レベルの極限の問題まで解けるようになっていました。
本人は、
「少し数字を変えられたり、問題の形を変えられたりすると解けなくなる」
という悩みも話していました。
しかし今回、数学リニアに載っている問題を単に「一度解ける」というところで終わらせず、スラスラ解けるところまで徹底的に繰り返したことで、その場で初めて見る問題にも対応することができました。
数学リニアには、「セルフテスト」という、定期テストをはじめ、入試本番でも通用するスピードを身に付けてもらうための制限時間がそれぞれの問題に設けてある演習があります。これを彼女は時間内でクリアできるまで徹底的に繰り返し練習しました。
つまり、彼女の問題は、
「応用力がない」ことではなかったのです。
基本問題の習得が、まだ「応用できる深さ」にまで達していなかった。
一度解けるところまでではなく、
自由自在に使えるところまで基本を叩き込む。
そこまでやったとき、初めて基本は応用力に変わります。
そして何より大切なのは、その変化を本人自身が結果として見ることができたことです。
進む速さでは、周りより遅かったかもしれません。
しかし数学の勉強では、速くページを進めることが目的ではありません。
最終的に、初めて見る問題を自分の力で解けるようになること。
それが目的です。
数日前まで「自分はなかなか進めない」と涙を浮かべていた生徒が、難関大学レベルまで引き上げた新しい極限の問題に正解し、自信を持って手を挙げている。
今回の10日間で私たちが生徒たちに経験してほしかったことの一つが、まさにそこにありました。

